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Collaboration / 若冲 × 天明鋳物

美術館と鋳物工房でつくるカプセルトイ

吉澤記念美術館の若冲展とのコラボ企画。鋳物のベーゴマと鋳物製ストラップを1回500円のカプセルトイに載せ替え、館の物販に新しい単価帯と「買う前に触れる」入口をつくりました。商品企画から封入リーフレットの版下設計、機械詰まり・在庫切れを想定した運用マニュアルまで一貫して担当。地域おこし協力隊としての活動から立ち上げ、iGrec創業後も継続しているプロジェクトです。

商品企画製造管理印刷設計運用設計物販
協業先
吉澤記念美術館 / 天明鋳物工房
展示
吉澤記念美術館 若冲展(2026年10月)
商品構成
鋳物のベーゴマ / 鋳物製ストラップ(2種、ランダム封入)
価格
1回 500円
担当範囲
企画・製造管理・印刷設計・運用設計

背景 — 地域おこしとしての取り組み

この企画は、iGrec代表・城石が地域おこし協力隊員として佐野で活動していた期間に立ち上げたプロジェクトです。任期中の任務としてではなく、地域の伝統工芸である天明鋳物をより広い世代に届ける新しい入口をつくることを目的に、吉澤記念美術館と鋳物工房を自ら結び付けて動かしました。

一過性の展示コラボや記念グッズに終わらせず、継続的に回せる事業として組み立てた点が、地域おこしとしての意味を持つ核心です。iGrec創業後もこの関係性を軸に販路開拓事業へ接続し、天明鋳物のブランドを次の世代へ持ち越すための足場のひとつになっています。

地域おこしとして立ち上がった企画の背景を表す図

課題(美術館物販側)

吉澤記念美術館は、栃木県佐野市にある伊藤若冲ゆかりの美術館です。企画展のたびに集客と話題づくりには成功していましたが、館の物販は「観覧を締めくくる体験」として弱く、展示から売上への転換に長らく課題を抱えていました。ポストカードや図録という定番商品はあるものの、単価帯が偏り、若い世代や子連れファミリーが気軽に手に取れる商品が不足していたのです。

「展覧会を見た余韻を持ち帰りたい」という来館者の気持ちに、価格帯・購買体験・驚きの3点で応える商品が館内に存在しませんでした。特に子どもと一緒に訪れた家族は、観覧中の話題を子どもと共有した後、物販で子どもが選べる商品がなく、そのまま退館してしまうケースが目立っていました。

また、展覧会と連動した限定商品を企画したいという意向はありつつも、館内で企画・製造・運用まで組み立てる余力はなく、外部パートナーと組める体制が整っていない状態でした。

観覧後の物販で立ち止まりにくい状況を表す図

課題(伝統工芸側)

天明鋳物は品質も職人技術も本物です。しかし最安値でも数千円前後という価格帯が、初めて手に取るまでの心理的な壁になっていました。特に「若い世代」「観光客」「子ども連れの家族」といった、鋳物と接点の薄い層にとって、この価格は「気軽に試す」対象ではありません。

工房側にとっても、既存の販売経路——百貨店の物産展、地元の民芸店、卸——では出会えない層が確実に存在することは分かっていました。ただ、その層に届けるためには「価格の入口」を用意する必要があり、しかも鋳物の魅力を損なわないミニマムな単位でつくれるものは何か、単独では見つけられない状況でした。

「触れれば分かるが、触れる機会をつくるのが最も難しい」——このジレンマは、天明浪漫Plusのレンタル事業と同じ構造でしたが、鋳物という素材そのものに気軽に触れられる価格帯の商品は、そもそも市場に存在していませんでした。

価格帯の高さで若い世代に届きにくい鋳物の状況を表す図

私たちがしたこと

吉澤記念美術館の若冲展とのコラボ企画として、鋳物製品を1回500円のカプセルトイとして展開するアイデアを立案しました。封入商品は「鋳物のベーゴマ」と「鋳物製ストラップ」の2種。伝統工芸品をカプセルトイという現代のエンタメ形式に乗せることで、年齢を問わず鋳物に触れる入口をつくっています。500円という価格は、来館者が「せっかくだから」と1回まわすのに躊躇のないラインとして意図的に設定しました。

ベーゴマは、鋳物の重さと肌合いをそのまま体感できる商品として選びました。ストラップは日常に持ち帰れる装いのある商品として、それぞれ役割を分けて設計しています。2種をランダム封入にすることで「もう一回まわしてみる」動機が生まれ、単価500円が結果として複数回転につながる仕組みも狙いのひとつです。

封入リーフレットは、若冲と天明鋳物という2つの文脈をつなぐ短い読み物として設計しました。歴史・製法・現代の職人の言葉を、カプセルという小さな体験と釣り合うサイズで版下から起こしています。「500円のガチャを回す」という軽さと、「1000年の伝統に触れる」という重みを、1枚の紙で橋渡しする役割を持たせました。

運用マニュアルは、企画で終わらせないために特に力を入れた部分です。機械詰まりの発生パターンと対処、在庫切れの兆候察知、金銭トラブルへの対応手順、来館ピーク時の運用など、現場で起きうるリスクを洗い出しました。1台体制ではメンテナンス時に販売が止まってしまうため、2台体制での実施を提案し、来館者導線に合わせた設置位置まで含めて設計しています。

カプセルトイ2種と封入リーフレット、運用マニュアルを表す図

成果

これまで美術館物販で対応できていなかった若い世代・子連れファミリーが、観覧後に立ち止まる商品ができました。「500円のカプセルトイ」という手軽さと「若冲コラボ・天明鋳物」という体験の希少性が両立し、記念品としても土産としても選ばれる商品として稼働しています。館内での話題性が生まれたことで、SNS投稿を通じた来館前の期待醸成にも寄与しています。

「500円で触れる」入口は、iGrecが並行して手がける天明浪漫Plusの「レンタルで暮らしに置いてみる」体験、そして「購入する」という最終的な選択肢へと段階的につながる階段の一段目として機能しています。ここで初めて鋳物に触れた人が、後日レンタルや購入に進む動線が実際に観測されており、価格帯の異なる商品が相互に流入を生む構造ができつつあります。

美術館側にとっても、外部パートナーと組んで企画から運用までを回した経験そのものが資産になりました。次の企画展でも同様の仕組みを応用しやすくなり、物販を「展示の付属品」から「観覧体験の一部」へと位置づけ直す機会になっています。工房側にとっても、若い世代の反応を直接受け取れる貴重な場が生まれ、新商品の企画にも影響が及び始めています。

新しい顧客層と物販の刷新、他事業との連動を表す図

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